公園通り動物病院 blog

開院7年目の動物病院です。病気の解説のほか、院長がどんなことを思いながら仕事をしているのか、あるいは診療にあたってのポリシーのようなものなどを飼い主様にお伝えし、ご理解いただく一助となればと思います。おつきあい頂ければ幸いです。更新は少な目です。。。病院HPはこちら www.parksteet-ah.com

急性腹症

なんとなく元気がない、とのことで高齢のMix犬(20kgくらい)の子が来院しました。

聞けば前日、他院で診察を受けて治療をしてもらったとのこと。

今日はそちらの病院がお休みとのことで当院を受診されたそうです。

 

前日には血液検査などもしており、とくにデータ上は問題ありません。

診察した先生の話では腰が痛いのではないか?とのことで鎮痛剤を処方されたそう。

 

しかし一応自分で歩けるものの明らかに元気はなさそう。

よく見ると可視粘膜は蒼白で、貧血もしくは血圧低下が見て取れます。

そこで、前日に検査したばかりではありますが、その旨をお伝えし、再度検査をしてみると、前日よりもヘマトクリット(血液の濃度)がおよそ10%も低下しています。

ここで一番嫌なのは出血、それから溶血です。

外見上は外傷もなく出血などありませんが、体の中はわかりません。

そこで腹部の超音波検査を実施。腹腔内に液体貯留があります。

腹腔穿刺で貯留液を採取。

イヤな予感が当たり、真っ赤な血液。腹腔内出血です。

 

脾臓には多数の腫瘤があり、肝臓もちょっとあやしい腫瘤が見える。

脾臓もしくは肝臓の腫瘍の破裂による腹腔内出血の可能性が濃厚です。

このまま放置すれば出血多量で死ぬだけなので、

ハイリスクではありますが、その夜、緊急手術となりました。

 

破裂した脾臓を摘出して、肝臓の出血点を止血し、外科用の止血材を埋め込み、麻酔覚醒しました。

手術はなんとか乗り切ったものの、かなりの出血量から回復は厳しいかもしれないと判断し、飼い主さんとの時間を大切にしていただくため、翌日には退院としました。

 

数日後、包帯が汚れたからとのことで来院されたのですが、すっかり元気も出てきて

なんとか危ないところを乗り切ってくれたようでほっとしました。

 

こういった内臓破裂、腹腔内出血のことを急性腹症と総称するわけですが

大事になる前に健診で発見できることもあります。

元気な時にわかっていれば、対策もとれるかもしれず、突然のお別れを避けることもできるかもしれません。

シニアの犬・猫の飼い主さんには、秋になり暑さも落ち着いてきたところで健診をおすすめします。