去勢手術と会陰ヘルニア
オスの去勢手術についてはこれまであまり書いたことはなかったので、今回はそれについて。
10歳くらいのシーズー犬(未去勢)が、お尻の脇が膨らんでる、との主訴で来院しました。
肛門の左側がおおきく膨らみ、しこりのようですが、よく触ると形が容易に変化し、粘土のような感触です。
調べるために直腸検査をすると、膨らみのある方向(左)の直腸内に憩室ができ、便が大量に溜まっていました。
その便の塊が粘土のような触感のしこりとして外側からも触れる用になっていました。
直腸壁の脇を支える肛門の筋肉群が弱くなり、萎縮した筋肉の間にヘルニア孔ができる、いわゆる会陰ヘルニアでした。
この病気の一番の問題は、重度の排便痛です。
肛門のすぐ脇に便が大量に溜まってしまい、カチカチになってしまうこともあり
その便を出す際に非常に強い痛みを伴います。
そのため、より高いQOLを期待するのであれば、やはり手術が必要です。
結局、左側だけでなく右側にもヘルニアがあることもわかり、両側のヘルニア整復手術と、直腸や膀胱が外に飛び出さないよう腹腔内に固定する手術、再発リスクを少しでも減らすための去勢手術を行い1週間ほどで退院となりました。
術後3ヶ月ほどたち、現在のところは元気そうです。
しかし、筋肉の萎縮が重度の場合、術後の再発も多い病気です。
人間では陰部ヘルニアとも言われ、中高年の女性に比較的多いそうですが、発症自体がまれな疾患の部類に入るようです。
対して、犬では未去勢のオス犬に多く発生します。
高齢犬では性ホルモンの影響で、お尻の周りの筋肉が萎縮しやすいそうで、それが会陰ヘルニアの発生につながると言われます。
すなわち、去勢手術が効果的な予防となります。
避妊・去勢手術は長所、短所どちらもあるため、よく知った上で行ってほしいと思いますが、とくにオス犬の場合、手術をするしないの判断に、このような病気があることも参考にしていただければと思います。