皮膚病の季節
うちの病院は6月にオープンしたのですが、その時期だと春の健康診断や狂犬病予防注射、フィラリア予防の患者さんの来院はかなり下火になってきます。
かわって、もっとも来院数の多い症例はやはり皮膚病です。
他の病院でずっと薬をもらってたけど治らず、
近くに新しく病院ができたようだから試しに行ってみようか、というふうに様子見がてらに来院されるケースが多いようです。
そのようにして来院される患者さんの多くは、動物病院自体がまったくの初診ではなく、他の病院でも一通りの検査・治療をされていて、アレルギーによると思われる慢性の皮膚病です。
飼い主の方も、経験的に治らないことは承知で、いつもよりひどくなったからとりあえず薬を出してほしい、という感じで来院されます。
完治しないという意味では正しい認識なのですが、そこでもう一歩、
アレルギー性皮膚炎の治療の目標は完治ではなく、症状を抑えながらQOL(生活の質)を少しでも向上させることで、上手に付き合っていくことが重要だということをお話します。
治療としては一般的に抗生剤やステロイドなどを使いますが、休薬後すぐに症状の再発がみられる場合はアレルギー検査をして食事療法などを試み、ステロイドの副作用が予測される場合は、免疫抑制剤やインターフェロン療法なども提案します。
薬用シャンプーやコンディショナーによる外用治療なども重要であり、効果をみながら選択していくことになります。
一般的に、アレルギー検査や免疫抑制剤、インターフェロン療法は他と比べると、やや高額な費用がかかります。
また、「◯日に1回シャンプーして下さい」などといって薬用シャンプーをお出ししても、仕事をされている方が帰宅後に犬のシャンプーをするのは大変なことです。
交通手段などがなく通院に制限のある方もおられます。
したがって、 各々の飼い主さんがどのくらいのコスト(費用、手間、時間)を負担できるかを相談しつつ、今より少しでも状況を良くするお手伝いをする、という姿勢がとくにアレルギー治療には重要です。
病院を転々として来られる方の
「やっぱり治らないんでしょ?」
という諦めの言葉を部分的には認めつつも、
それでも上記のようなことを地道に説明し、それによって、(ほんのわずかでも)認識を改めて、もう少しできることをやってみようか、という前向きな気持ちになっていただければ、臨床医としてとても嬉しく思うところです。